![]() | こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん"です。 皆さまは「上杉研究所(UESUGI)」というメーカー(ブランド)をご存知でしょうか? また、「上杉佳郎」氏という名前はご存知でしょうか?オーディオ歴が長い方にとっては今さら…とお感じだと思いますが、本日は今一度「上杉研究所」の歴史と、最近の製品について取り上げます。 |
■上杉研究所の創業者について![]() 雑誌「ステレオサウンド」のかつてのレギュラー評論家であり、西の上杉佳郎氏、東の菅野沖彦氏として、ハイエンドオーディオの頂点に君臨していた両氏ですが、上杉氏は、残念ながら2011年の年末に、69歳の若さで逝去されました。 上杉佳郎氏は1960年代、当時新進メーカーであった「エロイカ」で、大学生でありながら、エロイカ電子工業取締役技術部長として、同社のアンプ設計に当たっていたといいます。 また、天才ラジオ少年であった上杉氏は、3歳にして回路図を理解できたという伝説も残っている、まさに「アンプ設計の天才」だったのです。 その後、オーディオ評論家、真空管アンプ回路設計者として活躍されていた上杉佳郎氏が設立した専門メーカーが「上杉研究所(UESUGI)」です。 ちなみに、70年代には「初歩のラジオ」「ラジオ技術」などの技術誌をはじめ、前述の「ステレオサウンド」に菅野沖彦氏、瀬川冬樹氏らと共に、評論や記事を執筆されていました。 ■新進メーカー「エロイカ」というメーカー ![]() UESUGIアンプのルーツともいえる「エロイカ・アンプ」です。アンプメーカーの御三家(パイオニア・サンスイ・トリオ)が注目されている中で、彗星の如く登場したのが「エロイカ」でした。 「エロイカ」の第一弾プリメインアンプ「オールマイティ55」や、セパレートアンプ「フェニックス70」などは、当時人気を博していたラックスの3極管プリメインアンプ「SQ38D」(10W+10W)に比べて、出力は倍以上もあり、真空管アンプとしては正統的で贅沢な作りの製品でした。 当時は、国産アンプの主流がレシーバーやプリメインアンプであり、さらに真空管からトランジスタへの過渡期でもありました。 トランジスターアンプがにわかに持てはやされ、球よりはトランジスタの方が特性が良いという論調が、オーディオ界で勢いを強め始めた時期でもありました。 そんな変革期に登場した「エロイカ」のセパレートアンプは、高性能にもかかわらず、世界のオーディオ界に君臨していた「マランツ」や「マッキントッシュ」のセパレートアンプに比べ、為替が1ドル360円や高関税の時代でもあったとはいえ、3分の1程の価格であったといいます。 その後、上杉佳郎氏は「エロイカ」を退職し、同社も解散したのでした。 ■上杉研究所を創業 ![]() 上杉佳郎氏は、1971年に「上杉研究所」を創業し、第一作目は1973年に発表された管球式モノラルパワーアンプ「UTY-1」でした。 出力管には845を使い、シングル動作で出力は18W。上杉アンプの理念でもある「回路技術だけではなく徹底して良い素材を使った」製品でした。その後、数々のヒット作を世に送り出してきました。 現在の上杉研究所の取締役事業責任者である藤原伸夫氏は、2009年に上杉佳郎氏から「一緒に仕事をしませんか」との要請を受け、後継者として同社の事業に参加しようとされた矢先、創業40周年を目前にして上杉氏が急逝されたのでした。 当時、創業者を亡くしたことで、UESUGIユーザーやファンの多くは、同社の今後を非常に心配されたのでした。 しかし藤原氏が、故人の遺志を継ぐ形で2011年に正式に同社の事業責任者となり、開発の責任を受け継ぎ、事業の継続が決まった結果、修理体制が再構築され、新商品開発への期待も高まったのでした。 余談ですが、私自身、藤原氏がビクターのオーディオ技術者、とりわけアンプ開発の第一人者であった頃から存じ上げており、同社製品の試聴会の講師や新製品のプロモートの際に、その見識の深さ、オーディオに対する情熱には圧倒されたのを記憶しております。 その後、ビクターを退社され、フェーズテック(現:フェーズメーション)にオーディオ開発部の部長として招かれ、数々の画期的な製品を開発されました。 UESUGI製品は創業以来、1万台以上の製品を販売されているといわれますが、その殆どがいまだユーザーの元で現存しており、また、丁寧に扱われ、実際に綺麗な状態で使われているそうです。 UESUGIアンプのユーザーは、UESUGIアンプに対する思い入れから、そうした付き合い方をしたくなるのではないでしょうか。 ■上杉研究所の最近の製品を4機種ご紹介 ![]() 2011年12月発売の「2011シリーズ」は、創業者である上杉氏の「アンプ哲学」を集大成したメモリアルモデルという位置づけの真空管式セパレートアンプです。 ◆ 真空管式フォノアンプ搭載ステレオプリアンプ「U・BROS-2011P」 今や珍しい3系統のフォノ入力搭載。電源強化とLch/Rchへの独立電源供給により、エネルギー感に満ちた音像と空間再現性が向上。入力換算雑音値は真空管式フォノアンプの限界ともいえる-122dBVを達成。 ◆ ウルトラリニアー、三極管動作切替可能モノラルパワーアンプ「U・BROS-2011M」 2アンプ構成によってオーバーオールでの負帰還を排し、増幅段の低インピーダンス化と各段での適正な負帰還により、高いスピーカー駆動力を実現。 また、スピーカーの個性に応じて、出力管の動作形式をウルトラリニアー(38W)と三極管動作(20W)の選択が可能。 ■藤原氏が事業責任者となって以降のパワーアンプ2機種 ![]() ◆ モノラル300Bシングル 12Wパワーアンプ「U・BROS-300」 名出力管300Bシングルでは異例の12Wを実現。万全な保護回路を装備。プリント基板を使わず、ベテラン職人による手配線。300Bにはかつての松下電器産業の真空管を製造していた高槻電器工業製を採用。 ◆ モノラルKT-120サークロトロンPP 75Wパワーアンプ「U・BROS-120」 本機に採用されたCirclotron(サークロトロン)回路とは、プッシュプルを構成しながらも、トランスによるプッシュプル波形の合成を必要としない動作原理。 サイクロトロンと同社オリジナルの高効率出力トランスの組み合わせにより、小音量での再生能力とハイパワー再生を両立できたのです。 ■まとめ ![]() かつてのUESUGIアンプのサウンドは良い意味での「日本的で繊細なイメージ」が強かったのですが、新生UESUGIアンプでは、その繊細さを維持しつつ、音色がより豊富になり、味わいもより一層濃くなっています。 そして現代的な要素として不可欠な、解像度の高いヌケの良いサウンドも実現できたのです。ドライブ力もかつてのUESUGIアンプを明らかに超えており、ワイドレンジな真空管アンプとなったのです。 もちろん真空管の良さは維持しつつも、新しい現代的なエッセンスを加え、絶妙なハーモニーを奏でているUESUGIアンプの登場です。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん) |