★アキュフェーズから“アンプの王道 ”を行く純A級プリメイン登場!! アンプにはA級アンプ、B級アンプ、AB級、D級など色々な増幅方式があるのはご存知だと思います。一般的にはほとんどがB級もしくはAB級で、最近じわじわ増えてきたのがD級、いわゆるデジタルアンプです。しかしその音の良さは誰もが解っていても、世の中には純A級アンプは数える程しか存在しません。それは余りにも非効率で、十分なパワーを取り出すには、パワーの割に大がかりな筐体になってしまうからに他なりません。とにかく通常のB級アンプと同じ回路から取り出せるパワーは4分の1程度になってしまうのですから・・・。 アンプの本来の目的が大きな音に増幅することにあるのですから、その結果B級アンプが採用されるのは当然で、アンプが真空管からトランジスターになってほぼ半世紀、その大半はB級アンプでした。ただ贅を尽くした最高級のパワーアンプでは一部に純A級のアンプもありましたし、かつてオーディオが華やかかりし頃には、ビクターやパイオニアなど一部のオーディオメーカーに、純A級のプリメインアンプもあるにはありました。しかしそれらは単発的なものでシリーズ化された製品はほとんどありませんでした。 そんな中にあって私が過去最も印象に残っているのは、1970年代前半に発売されたヤマハの「CA-1000」と言うプリメインアンプです。このアンプは何と、パワーアンプ部がA級とB級に切り換えられたのです。当時オーディオビギナーであった私自身、そのアンプを苦難の末買い求め、そのA級動作時とB級動作時の音質の変化に、実に感動したのをいまだにハッキリ覚えています。それ程に衝撃的でしたし、それは画期的な製品でした。その音の滑らかさは印象深く、私のその後の数あるオーディオ遍歴において、ある意味、音質追求の“最終目標”にすらなったと言えます。 その後、高級プリメインアンプとしては、ラックスが1981年A級プリメインアンプのその後の大きな流れを作った L-550、1983年L-550X 、1985年L-560 、1989年 L570 、1995年 L-580と A級プリメインアンプは続きました。そしてしばらくブランクがあって2005年のL-590Aへと続きL-590AⅡ、そして現在の「L-590AX」に連なっています。 一方、今回ご紹介するアキュフェーズの純A級プリメインアンプは、2002年「E-530」、2005年「E-550」、2009年「E-560」とラックスがA級アンプの開発をお休みしている間に、その地歩を固めて行きました。本来アキュフェーズは会社設立当初から低能率のスピーカー(例えば米国AR社の「AR-LST」)を鳴らすべく、当時国産としては異例の150W+150Wの大出力のB級パワーアンプ「P-300」が出発点でしたので、1991年発売のモノラル100Wのパワーアンプ「A-100」を開発するまではすべてB級アンプで、それはB級アンプの質を極限まで高めることに専念して来たのでした。 その後、一部マニア層の要望やオーディオの小音量リスニングの流れにも対応すべく、純A級パワーアンプの新たな流れを確立して行くのです。それらはいずれもステレオパワーアンプで、最初は1993年発売の「A-50」、1995年「A-20」、1998年「A-50V」、2000年「A-20V」、2004年「A-60」「A-30」、2006「A-45」、そして現行の「A-65」「A-46」「A-35」へと続きます。いずれもほぼ片チャンネル当たりのパワーが型番となっています。 そしてアキュフェーズの純A級プリメインアンプは、一号機の「E-530」以来、クラシックファンを中心にアコースティック楽器やボーカルを中心にお聴きになっているオーディオファイルに絶大な支持を受け、国内はもとより海外、特にドイツでの評価が非常に高いのです。 今回ご紹介する「E-600」は、セパレート・アンプのグレードを追求、いままでアキュフェーズが培ってきた高度な設計テクノロジーを結集、さらに進化した『AAVA方式ボリューム・コントロール』を搭載、最新回路と高品位グレードの素材によって、同社の40周年記念セパレートアンプ「C3800」「A-200」のエッセンスを可能な限り注入して完成したのです。 『AAVA(Accuphase Analog Vari-Gain Amplifier)』方式とは、可変抵抗器や固定抵抗器の組み合わせによって減衰を行う従来の音量調整方式ではないため、高S/N、低歪率を維持しながら音質の変化なしに音量を調整することができます。前作に比べこの『AAVA』のインピーダンスを半分に下げたことにより、さらに低雑音化を図っています。またこの『AAVA』は16種類のV/I(電圧/電流)変換器を電流スイッチで切り換えて音量調整を行うのですが、実にその組み合わせは2の16乗=65,536段階にものぼるとのことです。 ボリュームは同社セパレートアンプの上位モデルと同様「ボリュームセンサー機構」を搭載しており、ノブは高級感あるアルミ削り出し、モーターによる電動機構でリモコンにも対応しています。 そして本機の“肝”とも言うべき純A級パワーアンプ部には、最新の『インスツルメンテーション・アンプ構成』を導入しており、信号入力段を含めたパワーアンプ全体がバランス構成を採用すると言う贅沢極まりない内容となっています。これによって機器内で発生する雑音の排除や低歪を実現するとともに、周囲の環境変化にも強い仕様となっています。また、帰還インピーダンスを下げてより一層の低雑音化を実現しています。 さらに、同一回路を並列接続し諸特性を向上させる独自技術『MCS+』、出力信号を電圧ではなく電流の形で帰還させるため少量のNFBですむ『カレント・フィードバック増幅回路』を採用、また、アンプの出力インピーダンスを下げ、ダンピングファクターを従来機の2.5倍の“500”としています。これらの結果、立ち上がりに優れた自然なエネルギー感が得られ、スピーカーの駆動力が高まり、低域の制動力も大きく向上しています。 その他、アンプの異常時にスピーカーを保護するための保護回路に『半導体(MOS-FET)スイッチ』を採用、音質と安定性に優れた『ロジック・リレーコントーロール』による入力信号切り換え、トーンコントーロールも音質重視の『加算型アクティブ・フィルター方式』を採用するなど、同社の持てる技術をフルに採用して完成したのです。 ヘッドホンアンプも専用のアンプを内蔵。アナログ入力は、バランス(XLR)2系統とアンバランス(RCA)5系統、パワーアンプの単独使用も可能なバランスとアンバランスの各1系統の入力も持っています。さらにプリアウトのバランス/アンバランス1系統ずつ、そして最近では珍しいレコーダーの録音/再生端子まで搭載すると言う至れり尽くせりの装備です。スピーカー出力も大型のスピーカーターミナルを採用したものが2系統で、バイワイヤリングにも対応しています。 さらに親切設計は極められており、本機のリアパネルにはオプションボードが2枚まで増設することができます。同社のフォノイコライザー・ボード「AD-30」を使えばMC/MMのあらゆるカートリッジに対応でき、MC/MMの切り換えはアンプパネル面で行えます。またUSB/同軸/光デジタル対応DACボード「DAC-40」を使うことで、アンプ本体のDAC切り換えボタンが使用でき、入力されたデジタル信号のサンプリング周波数も本体ディスプレイに表示されると言う親切設計です。 そしてアキュフェーズアンプの“顔”とも言えるフロントパネルのパワーメーターには、最高級パワーアンプ「A-200」のメーター技術を採り入れて、『バーグラフ・メーター』を装備しています。このメーターは対数圧縮型ですので、広いダイナミックレンジを一度にモニターすることができます。またシアター用に使用する際、消灯も可能です。 主な仕様は、定格(連続平均)出力が、8Ω時30W/ch、4Ω時60W/ch、2Ω時120Wと反比例しており、これは電源の強力さを表しています。さらに1Ω(音楽信号に限る)負荷の場合も150W/chという大出力を安定してひねり出します。消費電力は200Wと決して省エネではありませんが、これは音質最優先と言うことでお許し願いたいと思います。これからの季節は暖房器具にもなりますが、夏の冷房は必須です。重量は24.7kgでプリメインとしては最重量級です。 この純A級プリメインアンプ「E-600」を手にされたオーディオファイルの満足度は、巷のセパレートアンプのそれを大きく上回ることは確実です。その音質の素晴らしさや発展性において、私が自信を持っておすすめします。 |