![]() | こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん"です。 今回は、デンマークが誇るスピーカーメーカー DALIの「OPTICONシリーズ」を取り上げます。 オーディオファンはご存じの「HELICONシリーズ」の半分以下の価格でありながら、低域から高域まで一体感が出たのは大きな進化だと思います。多くの音楽ファンにお使いいただきたいリーズナブルな価格のスピーカーの登場です。 |
![]() DALI 「OPTICONシリーズ」 (写真はブックシェルフ型「OPTICON 2」) |
■スピーカーメーカー「DALI」とは![]() デンマークと聞いて、「アンデルセン = 童話の国」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。また、オーディオの分野では、世界有数のスピーカーメーカーである「DALI」「DYNAUDIO」「B&O」があります。 デンマークはインテリア工芸の国としても有名で、勤勉で素朴な国民性と、広大で豊かな森林資源から産出される良質な木材によって作られる、優れたインテリア工芸品、特に高級家具には定評があります。そんな環境だからこそ、その木工技術を活かしたスピーカーに優秀な製品が多いのだと思います。 今回取り上げるスピーカーのメーカー「DALI」は1983年、ピーター・リンドルフにより設立され、現在、同社は北欧を代表するAudio Nordグループのスピーカー製造・販売部門となっています。DALIという名前は「Danish Audiophile Loudspeaker Industries」に由来しています。 DALIのスピーカーは、高級ブランド家具を彷彿とさせるデザインや仕上げ、独自のスピーカー技術によるユニットや厳選されたパーツを使用して、製品化されています。欧米では、ハイエンドスピーカーブランドとして、既に確固たる地位を築いており、さらに新しいリファレンスを追い求め、常に進化しつづけているのです。 また、オーディオ装置の存在を感じさせずに、もっと気軽に音楽を心から楽しんでもらいたいという「Musical Emotion (音楽の豊かな感情)」を標榜して開発されています。 一般的に、スピーカーは周波数特性が重視されますが、DALIは位相特性も重視して、使用ユニットとネットワーク回路を完全にマッチングさせるべく、特に入念に作り上げられ、結果として低損失も実現しています。 さらに、フラットなインピーダンス特性を実現できたことで、急激な負荷変動が抑えられ、結果的に「アンプにやさしい」設計のスピーカーであるともいえます。 DALIでは、比較的リーズナブルな「ZENSORシリーズ」から、ハイエンドの「EPICONシリーズ」まで、5シリーズがラインナップされており、いずれもヨーロッパ伝統のサウンドを奏でることから、日本国内では各シリーズともベストセラーを続けています。 そんな中、従来の「IKONシリーズ」「LEKTORシリーズ」の穴を埋めるべく開発されたのが、今回ご紹介する「OPTICONシリーズ」なのです。 ■DALI「OPTICONシリーズ」 ![]() DALI「OPTICONシリーズ」には、ブックシェルフ型 1モデル、フロア型 3モデル、センタースピーカー 1モデルの計5モデルがラインナップされています。 4年前に登場したハイエンドの「EPICONシリーズ」に始まったDALIのユニットの改革が、2014年の「RUBICONシリーズ」に続き、今回の中堅モデル「OPTICONシリーズ」にまで、その技術が確実に受け継がれてきています。 新開発ユニットは、ウーファーの磁気回路にSMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)という素材が採用されています。このSMCは、絶縁のため、一粒一粒に科学的にコーティングした砂鉄を成型したもので、磁気は通すが電気は通さないという特殊な性質を持っています。 このSMCをポールピースに採用することで、ボイスコイル周辺に発生する渦電流が原理的に発生せず、電流歪みが低く抑えられ、さらにその歪み成分も第2次高調波歪み(奇数次の高調波は歪みとして感じる)が主体であり、耳につきにくいというメリットがあるのです。 コーンの振動板には、従来同様のウッドファイバーコーンが採用されていますが、「OPTICONシリーズ」ではダンピング材を減らすことで軽量化を図っています。エッジのゴム素材も特別に吟味し、低損失駆動を実現できたことで、微細な信号も埋もれず再生できたといいます。これらにより、上級機の「RUBICONシリーズ」より僅かながら高能率化できたのです。 「OPTICONシリーズ」のフロア型には、DALIのスピーカーの最大の特徴でもあるリボン型とソフトドーム型のツイーターのコンビネーション(ハイブリッド・ツイーターモジュール)を採用しています。 30kHzまで再生可能な大口径28mmシルクソフトドームは、より低域まで再生可能になったことで、ウーファーとの音のつながりもスムーズになっています。 そして、リボンツイーターは上限を実用再生帯域の32kHzにとどめており、高域拡散というDALIの最大の狙いを担っているともいえます。 キャビネットの基材はMDFですが、前作「IKON MK2」より更に密度を上げています。 また、ウーファーのすぐ後ろに各々専用のバスレフポートを設け、気流の乱れを抑えてウーファーとポートとのタイミングの最適化が図られています。 内部には、共振によるカラーレーションから逃れるため、ブレーシング(補強)も施されています。 なお、外観は高級家具を思わせる、グロス塗装で仕上げられています。 ■試聴しました ![]() ![]() ジョーシン日本橋1ばん館の4階オーディオフロアにあるスピーカーコーナーには、フロア型の「OPTICON 6」とブックシェルフ型の「OPTICON 2」を展示しています。今回の試聴は「OPTICON 6」を中心に行いました。 私のようなオーディオ販売歴の長い人間にとっては、DALIと聞いて、最も印象に残っているスピーカーは「HELICONシリーズ」です。それは、音質が評価され、異例の販売実績を残したからです。 それまで国内に紹介されていたスピーカーは、英国製品が中心だったのですが、「HELICONシリーズ」が登場して、デンマーク製スピーカーが国内オーディオシーンにおいて、重要な地位を占めるようになったと言っても過言ではないと思います。 「HELICONシリーズ」の柔らかく包容力のあるクラシックサウンド、温かく優しさのあるボーカルなどは、独自のリボンツイーターとウッドファイバーコーンの組み合わせの《妙》とも言え、多くのクラシックファンやボーカルファンを魅了し続けて来ました。 そんなDALIが「HELICONシリーズ」の半分以下の価格で「OPTICONシリーズ」を発売したのです。その音質はズバリ、「これぞ、DALIの狙ったサウンドか!」と納得させられるものでした。 これまでの「HELICONシリーズ」の低音は、非常にふくよかで量感たっぷりに鳴ったのですが、一般家庭では低音が出すぎる傾向もあり、そこが扱いの難しさでもありました。 一方、「OPTICON 6」の低音は、柔らかさや粘り感はそのままに、ダンピングが強化され、多少量的にも抑えられ、扱い易くなっています。 さらに、楽器の木質感を出しつつ解像度が上がったことで、従来のクラシックはもちろん、ジャズやポップスのアコースティック系の楽器の表現力も明らかに向上していると感じました。 改良されたウッドファイバーコーンとハイブリッド・ツイーターモジュールの再生スピードが合致したことで、音調的にも低域から高域まで一体感が出たのは大きな進化だと思います。 特にリボンツイーターは、中高音に含まれる倍音成分を正確に出し、響きやニュアンスの表現力が非常に豊かで、透明感の高いサウンドとなっています。 「OPTICON 2」は、リボンツイーターを外したコンパクトなブックシェルフ型で、上級機のようなスケール感こそ無理ですが、ウーファーやソフトドームは「OPTICON 6」と共通で、そのエッセンスは十分備えています。 場所を取らず、大きさ以上に豊かで滑らかなサウンドは、いかにもヨーロッパトーン、デンマークサウンドといえるものでした。 「OPTICONシリーズ」は、DALIの代表機種となるべく開発され、DALIの持つノウハウをたっぷり詰め込んだ、多くの音楽ファンにお使いいただきたいリーズナブルな価格のスピーカーです。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん) |