![]() | ハイエンドオーディオ担当の "あさやん"です。 本日は、銘真空管「300B」を搭載したプリメインアンプ「TRV-A300XR」の魅力に迫ります。真空管の魅力を具現化してきたトライオードの至高の一台です。 |
■株式会社トライオードと山崎順一氏![]() 株式会社トライオードは、1994年に有限会社トライオードサプライジャパンとして、現在の代表取締役(社長)である山崎順一氏によって設立されました。 山崎氏の姿勢は設立当初から一貫しており、「低価格で魅力ある商品を!」をコンセプトに、数多くの製品を発売してきています。 また、「オーディオ機器とは音楽を演奏する楽器であり、機器の性能競争よりも音楽を音楽らしく再生することが大切なので、例えローコストであっても音楽の感動を伝える魅力には変わりがない。」と、当初から考え方も全くブレることなく、一貫しています。 ちなみに、私と山崎氏とは同社設立当時からの旧知の仲です。 当時私は、河口無線の店長で、そこに山崎氏がTRIの第一弾製品「VP-300BD」を持って、来店されました。おそらく、飛び込みセールス的な訪問だったと思います。(当初のブランドは「TRI」でした) その際、会社設立の経緯をお伺いした中で、山崎氏が会社設立以前は国鉄(現JR)の車掌であったことや、趣味が高じて会社設立に至ったことなどをお話しくださいまして、興味深く拝聴したのを今でもはっきり覚えています。 山崎氏のオーディオに対する姿勢や考え方に対し、当時私は「この会社は絶対に成功するであろう」と確信したものでした。 その私の予想した通り、トライオードは今年で創業22年目を迎えました。 その間、多くの有名メーカーが音響部門から撤退したり吸収合併されたりと、国内オーディオメーカーの数は激減してしまっています。 そんな中、トライオードは真空管に特化したことが幸いして、着実に製品を市場に投入し、充実したラインナップを築いてきたのです。 同社をこれだけの規模のオーディオメーカーに育て上げたことは、ひとえに山崎氏の手腕の賜だと思います。 そんな同社は、今となっては非常に希有な歴史を持つ、国内オーディオメーカーであるとも言えます。 トライオードは真空管アンプの製造にとどまることなく、2003年には英国スペンドール、2014年カナダのKRONOSの日本総代理店となり、さらには、トライオードブランドのCDプレーヤーやフォノイコライザーなどの製品化も行っています。 また、別会社として、ゴールドムンドジャパン株式会社を設立。ゴールドムンド製品をはじめ、カクテルオーディオ、独BMC製品の日本総代理店ともなっています。 今回ご紹介するのは、同社第一弾の製品でも使われ、山崎氏にとって非常に思い入れの強い銘真空管である「300B」仕様のA級シングルの最新プリメインアンプ「TRV-A300XR」です。 真空管の魅力を具現化してきた同社が、これまでの真空管アンプのノウハウを凝縮して創り上げた、至高の一台です。 ■プリメインアンプ「TRV-A300XR」 ![]() 300Bから始まったトライオード社の歴史の中でも、2003年発売の「TRV-A300」シリーズはロングセラーを続けており、2011年の「TRV-A300SER」を経て、今年2016年に「TRV-A300XR」となって登場したのです。 同社22年の歴史の中で、本機は14作目にあたる300B搭載アンプです。それほど、山崎氏の「300Bへのこだわり」は半端ではないのです。 この「TRV-A300XR」は、初段に双三極管の12AX7(ECC83)を1本、続くドライバー段に12AU7(ECC82)を2本、そして出力段は300BによるA級シングルという構成です。 従って、定格出力は8W+8Wという、通常のアンプからするといかにも小さくみえますが、どうしてどうして、このパワーでも余程の低能率スピーカーや特別大音量を要求しないなら、十分な音量は得られます。 それはご存知のように、真空管とトランジスタでは歪みの出方やその質の違いによるものです。 フロントパネルには高級感のある分厚いアルミが使われており、本体のシャーシも非常に頑丈で、叩いても鈍い音しかしないほど。よくある自作の真空管アンプで使われるような肉厚の薄いシャーシとは雲泥の差です。 ![]() フロント部 フロントにある2個のノブはもちろん、脚にもアルミの削り出しが使われており、ここにも手抜かりはありません。 入力はリアパネルに、フォノ(MM)が1系統、LINEが2系統、前面パネルにもLINEが1系統あり、いずれもRCA端子です。さらに、フロントにはヘッドホン端子があります。 スピーカー出力は、6Ωと8Ωを切替ではなく、繋ぎ替える方式です。リアには、REC OUTも設けられています。 電源は、IECインレットによる着脱式で、ケーブルの変更も可能です。音量の上下とミュートが可能なリモコンも標準装備されており、このあたりは今風です。 本機は本来、固定バイアス方式ですが、天面にはバイアス確認用のメーター、バイアス調整ボリューム、ハムバランスボリュームを設けてあり、真空管交換時にも簡単に最適な調整ができるという寸法です。 さらに、整流回路に高速デバイスであるSiCショットキーバリア整流ダイオード(前作のA300SERでは傍熱管5AR4を使用)を初めて採用することで、トロイダル電源トランスと相まって、効率・レスポンスに優れた電源回路を構成できたのです。なお、出力トランスには、オリエントコア型が採用されています。 本機ならではの機能として、天面にNFB(ネガティブフィードバック:負帰還)のON/OFFを切替え出来るスイッチが設けられており、ユーザーの好みで設定変更が可能です。 NFBをONにすると、僅かに音量(3dB)が下がり、S/Nが向上するようです。私としては、A級真空管アンプの良さを味わいたいので、OFFの方が好みではあります。 ■さて、そのサウンドは如何に? ![]() いつものように、日本橋1ばん館で試聴機をお借りして、ハーベスのスピーカー「HL COMPACT 7ES-3」使用して、試聴しました。 真空管ならではの温かみや豊潤さを讃えつつ、艶やかで張りのあるサウンドでありながら、真空管からイメージする古めかしさを感じさせない、若々しい音離れの良い明るめのサウンドがハーベスから聴けたのです。 ジャズでは、わずか8Wの出力とは思えないほどの厚みとパワーを感じさせ、ここでもレトロな真空管アンプとは次元の違う、立ち上がりの良いキビキビしたサウンドでした。 一方、ボーカルは予想に違わず、肉声や人肌の温かさを感じさせるリアルさは、真空管アンプの面目躍如といったところです。「これぞ、真空管!」と納得しました。 わずか8Wの300Bアンプの魅力は、トランジスタアンプにはない滑らかさと肉質感が表現出来ることであり、大音量さえ望まなければ、ハイエンドなオーディオ機器でさえ実現できないようなリアルなサウンドが再現出来ます。 きっと最新のスピーカーでも、従来と違った魅力を引き出してくれることでしょう。 また、300BをPSVANE製のWE300B仕様に変更した「TRV-A300XR-WE300B」も用意されています。 ■最後に ![]() このアンプは、「一度は真空管アンプを…」とお考えのオーディオファンをはじめ、ハイエンドのオーディオシステムをお持ちで、時には気分転換にサブで300Bアンプを使ってみたいとお考えの方にもお勧めします。 トライオード「TRV-A300XR」は、貴方を魅惑の真空管アンプの世界に誘ってくれることでしょう。 ただ今、「TRV-A300XR」はジョーシン日本橋1ばん館にて試聴可能です。機会がございましたら、ぜひお立ち寄りください。 (あさやん) |